厚生労働省|障害者芸術文化活動普及支援事業

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南東北・北関東ブロック 福島県での研修会開催報告

2019年3月27日

今年度、南東北・北関東ブロックでは、支援センター未設置県での研修会を開催することになりました。
3月10日(日)には、福島県のはじまりの美術館で、館長の岡部兼芳さんの進行で「障害のある人が表現活動することの意味~福島のこれからを考えよう~」と題し、工房集の宮本恵美さんと、障害者芸術活動支援センター@宮城[SOUP]の柴崎由美子さんを講師に招いてお話しいただきました。

このブロックは現在、宮城県と栃木県が支援センターを立ち上げており、来年度に福島県が新たに加わろうとしています。支援センターは芸術文化活動を行う障害者本人やその家族、障害福祉サービス事業所、文化施設、支援団体等を支援する拠点となります。

実際にどのような支援を行えばよいのかを、現場の中で作品が生まれる仕組みづくりの視点から宮本さんにお話しいただき、障害のある方の芸術活動を行う環境づくりという視点から宮城県で2011年から支援センターを開始されている柴崎さんに、支援センターに求められることについて語っていただきました。

工房集は2002年に開所し生活介護事業を行っており、利用者の支援区分は5・6と重度の方が多くを占めています。アトリエを始めるにあたり、大勢の利用者がいる中で特別な利用者に特別なアプローチを行うのか?と議論があったそうですが、宮本さんを始めスタッフの皆さんは、利用者は可能性を秘めており、特別な方法という解釈ではなくみんなの宝なんだ!ということを訴えて実行に移したそうです。新たなことを普及するにあたって、法人自体が変わらないと社会は変えることができないと思い、外部発信する内容を、内部にも同じように働きかけました。その後、運営会議を設け、展示会の企画、利用者の表現方法、存在自体に価値がありそれを伝えるべくして作品を展示していきます。展示の反響はその場だけのものではなく、他県、海外にまで広がり展示会の依頼をいただくようになっているそうです。

作品は共通の物を自由に工作し表現してもらう物もあれば、個々に合わせて作品を作ることもあり、個々に合わせてどんな作品を使ってもらえるのかをみんなで話し合いながら決めて今まで活動を続けてこられ、もう25年になるそうです。作品の二次利用においても、歌手とのグッズ作成のコラボを申し込まれたり、メーカーとの共同制作でロイヤリティーを頂くことも多く、利用者自身も喜び、周囲の見る目も変化し、いい風が吹いていると感じられるようになってきたと仰っていました。

柴崎さんの所属されるエイブル・アート・ジャパンは元々は東京を拠点にしていましたが、2011年からは新たに宮城県にも事務局を置いています。そして、2014年には障害者の芸術活動支援モデル事業を実施し、障害者芸術活動支援センター@宮城[SOUP]を起ち上げました。震災による事業所復興を行う中で、福島県においては、NPO法人しんせいと共同し、デザインワークを活用した商品開発や仕事おこし事業に取り組まれてきました。宮城県内にセンターを起ち上げるにあたり、地域の方々や福祉事業所が震災の体験をした上で社会の再構築を一緒に行おうと考え、“まぜると世界が変わる”というコンセプトを軸に支援センターの活動を進めています。

支援センターの役割は「障害のある人が表現できる環境をつくる」活動であり、芸術に向かい合う利用者・職員を見つけ、情報の共有と共にネットワークに加わって形成していくことが大切であると仰っていました。支援センターを始める際、最初に取組んだことは情報を集めること。作家がどこにいるか?在宅や事業所の他、民間の画塾、NPO法人が創作活動の場を提供しそれぞれが行っておられた為情報を一元化し、“どこに誰がどのような活動をできるか”をウェブサイトで閲覧できる仕組みを作ったそうです。さらに、“誰のどんな視点から”充実していくかを精査し、公共の文化施設とも連携をとり、アートスペース情報、県内の活動事例を記事にして紹介する等を行い、地域の方にも活動を知ってもらうことを続けています。

研修会の創出をする際には、月に一度アトリエを見学して、スペースの使い方、材料調達方法、料金、テーマ、時間の使い方等をインタビューして、それぞれの団体個人が学習できる研修の場をつくられています。作品の発表の場では作家本人のトークを通して、作家や支援者へどのような工夫を設ければ充実したサポートが行えるか考える研修も行っています。ネットワークの豊かさをつくるためには“知る、繋がる、やってみる、検証する”ということを徹底し、次につながる工夫を継続していたから今の横のつながりの豊かさを生んできたのだと感じると仰っていました。

最後には、岡部館長の進行で、講師のお二人とのトークや参加者からの質疑応答の時間を設けました。参加者の多くは福祉関係者で、アート商品の製作や販売、ロイヤリティのことなどの質問が多く投げかけられました。また、一般の方からは、まちづくりやノーマライゼーションのために役立ちたい、何かできることはないかという質問もあり、障害の有無に関係なくアートを楽しめる場についてそれぞれの考えが話されました。

岡部館長は、今後の福島県における障害者の文化芸術活動の普及について、「相互に繋がりあって、ともに学びながら、福島をよりよい場所にする活動を広めていけたら」と思いを語られました。



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